ヴィアックス図書館の窓

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kyori_001.jpgkyori_002.jpg  2011年夏に図1に示した三つの都市(ニューヨークとフィラデルフィア,そしてテネシー州のジャーマンタウン)をまわって,都合12の図書館を訪問しました。
 そのうちのブルックリン公共図書館(BPL)とフィラデルフィア・フリーライブラリー(PFL)という二つの「図書館システム」(図書館システムとは,コンピュータシステムではなく,複数の図書館が全体としてその役割を展開する図書館網のこと)についてお話します。            
 報告会でとりあげたジャーマンタウン・コミュニティライブラリーについてはここでは割愛し,「図書館の住民との距離」という観点で,本文はまとめました。


1.都市型図書館でのサービス事例
 BPLとPFLはともに中央館と50以上の分館を擁している,全米でも有数の大規模な図書館システムです。最初に,それぞれの特徴や調査の観点を表1に示します。

表1 二つの都市型図書館
kyori_009.gif(数値はAnnual Reportによる。ただし,一部の数値は,http://www.librarytechnology.org/)


1.1 ブルックリン公共図書館(BPL
 BPLの創設は,玄関前にライオン像のあるニューヨーク公共図書館(NPL)とほぼ同時期(1892年にニューヨーク州議会で計画された後1896年にブルックリンの議会が設置を決定した)で,組織形態が非営利法人(NPO)である点も同じです。ただし,BPLの発展はさほど円滑ではなく(現在の中央図書館の建設が始まったのは1912年でしたが,完成したのは1941年でした),NPLと比べると予算もコレクションも大きく違います。ちなみに,NPLは,ニューヨーク市のうち,マンハッタンとブロンクス,スターテン島をカバーするもので,BPLはブルックリンをカバーします。
 しかし,ビジネスライブラリー・サービスについては, NPLのSIBL(Science, Industry and Business Library)が,たかだか10数年の歴史しかないのに対して,BPLのビジネスライブラリー・サービスは,1943年からそのサービスを始めていました。公共図書館としてのビジネスライブラリーは,最初にボストン(1930年)が取り組んだのですが,ブルックリンも比較的早い段階でのスタートといっていいでしょう。
kyori_003.jpg ところで,図書館関係者であっても訪れることの少ないこの図書館を調査したのは,その点もありましたが,BPLがレオン・レビイ財団からの寄付金(3250万ドル)によって新しい学習拠点としてのインフォメーションコモンズの計画を2010年に発表したからです。
 インフォメーションコモンズとは,近年学術(大学)図書館を中心に普及している新たなサービスモデルです。パソコンと情報ネットワークが完備し,比較的ゆったりした座席の学習や仕事のできるスペースです。静かな部分もあれば,グループで議論している部分もあります。むろん必要な情報へはネットワークを通じてアクセスできますし,図書・雑誌も利用できます。
 しかし米国といえども,公共図書館ではまだこのような展開はほとんどなく,なぜ,BPLがそうした決定をしたかの理由が知りたかったのです。

(1)BPLにおけるインフォメーションコモンズのねらい
 今回の訪問時点では,BPLのインフォメーションコモンズはまだできあがっていたわけではありません。工事着手のための移転などをしている段階でした。図3のような図面等を参照しつつ,表2の趣旨をうかがいました。
 このようなスペースが必要になったのは,人々の利用スタイルの変化に着眼したということでした。インターネットで情報を探すため,いつもPC席は行列ができているという現状があり,ディジタル資料の出版が増大しています。また,この状況に即した,人による利用者支援サービスの強化も求められていました。
 その上で,インフォメーションコモンズの "ワイアレス・トレーニングセンター"では,情報リテラシーやデータベースについてのインストラクションのほか,種々の講習会を積極的に展開する計画です。それらは主に各種の行政サービス(government service / city service)です。BPLでは,これまでもこの種の講習会を展開していて,その数は311もあり,内容は,多岐にわたっています。図書館が自ら行うというより,種々のパートナーと連携して行うもので,図書館がコミュニティのファシリテーターとして位置づけられているということでした。このように,インフォメーションコモンズ計画は,コミュニティの人々を広く支援するという性格づけがなされていました。

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kyori_010.gif(2)ビジネス&キャリア・ライブラリーにて
 BPLビジネス&キャリア・ライブラリーは,地域図書館(Brooklyn Height Library)と同じ建屋の1階部分で,閲覧エリアの座席が82と,そのエリアから少し離れた20のPC座席の比較的コンパクトな図書館です。壁面の書架には国内外のビジネス・ディレクトリ(商工名鑑など)が,サービス,製品,金融などといった分野別に分けられ配架されています。また,各種のビジネス情報データベースも多数提供されていて,図書館員は,これらを使って利用者の相談に応じています。この種のコレクションを活用したレファレンスサービスは,ウォールストリートジャーナル紙(たとえば,Looking for free financial resources? Go to the library. 2010-10-07)がコメントしているように,中小企業者にとっては貴重な支援であることは想像に難くありません。
 利用者は,中小企業者,学生,投資家,職を探している人々が多いとのことでした。日々やってきて高度なデータベースを使いこなしている個人投資家もいるそうです。
 会社経営に関わる相談,職探し,あるいは投資相談などのプログラム(イベント)が毎週数回は開催されています。全米で,ビジネス支援に協力しているSCORE(Service Group of Retired Executives)のボランティアが,ここでも無料でさまざまな相談に乗ってくれます。
 BPLでは,毎年ビジネス支援サービスを受けて成功した事業企画のコンペを行い,優れたものに賞金を与え,またその後の活動もフォローするという活動をしています。PowerUP!Winnersです。種々の効果を地域社会にもたらしていることが,これによってうまく説明できています。

1.2 フィラデルフィア・フリーライブラリー(PFL)
 フィラデルフィアは,ベンジャミン・フランクリンが1731年に設置した会員制図書館「フィラデルフィア図書館会社(The Library Company of Philadelphia)」の地です。それは,読書のための書籍を人々の間でシェアするもので,いわゆる公共図書館の先駆的な存在といえます。この図書館会社は今でもサービスを続けています。このほかにもフィラデルフィアには由緒ある会員制図書館があります。
 一方,このPFLは,その名のとおり人々に資料を無料で提供するために1891年に設立された図書館で,1895年以降はフィラデルフィア市が運営する公立図書館となっています。その使命宣言には,"リテラシーを向上させ,学習の相談に乗り,知的好奇心を鼓舞する"としたためられています。
kyori_005.jpg 図4が,1927年に作られた現在の図書館の外観です。この建物は欧米の基準では決して古いわけではありませんが,図書館活動は大きく変わりましたから,2008年にSiobhan A. Reardonを館長に迎え,図書館の内部の改装計画が進められています。そして,ここでもまたインフォメーションコモンズの設置が視野に入っています。

(1)サービスの現況
 近年多くの図書館業務がアウトソーシングされ,利用者リクエストとリンクした発注の自動化まで事態は進展して(例:マクノートン社のサブスクリプション・サービス),分担する仕事が大きく変化しました。現在図書館員の仕事は,主として①資料選定,②インストラクション,③プログラム(イベント)といったものに集中しています。①に関していえば,コミュニティ・プロファイルをつくり,同時に多様化するメディアやニーズの変化には細心の注意を払っているとのことでした。②や③に関して,子どもや大人のためのプログラムの実績は年間で二万数千件にのぼります。
 統計によれば,この1年間(2010年7月~2011年6月)の入館者(自動計測)は, 6,103,628人,同期間の仮想訪問者(ウェブサイトヒットではなく,図書館利用)は6,131,726人,総貸出数は7,210,217件,レファレンス回答数は3,074,170件となっています。仮想訪問者数にみるように,電子図書の需要が爆発的に増加しています。紙の図書と同じように予約して待たねばなりません。電子図書の図書館サービスに関する出版者のビジネスモデルは,電子ジャーナルとは異なり,一定の副本数を限度としたもので,これまでの図書の扱いと類似しているようです。後日利用登録をし,私も試みましたが,評判の本は長い待ち行列ができています。なお,2011年度(2010年7月~2011年6月)電子図書コレクション数は,27,492点です。
 全館で利用者に提供しているPCは900台程度ありますが,45%のフィラデルフィア市民は自宅にPCを持っていません。そのために,さまざまな地域の機関(コミュニティセンター,教会,デイケアセンター,社会サービス施設,高等学校など)と連携して図書館のPCを設置しています。また講習会を行い,住民の利用機会を確保するようにしています。今後電子図書リーダー(書籍端末)の貸出も(クレディットカードの提示)行うとのことでした。

(2)近隣図書館での光景
 PFLは,中央館のもとに,54の分館(三つの地区図書館[regional library]と,51の近隣図書館[neighborhood library]と障害者図書館)があります。近隣図書館は,たいてい5~6人で運営しており,それぞれ週5日開館ですが,月~金と月~木及び土との二つのグループに分けられ,どこかが開館していますし,また時間もシフトさせています。中央館は,週7日(日曜日も)の開館です。
 リバティ・ベルなどのモニュメント近くにある,独立(Independence)という名の近隣図書館を訪ねました。近くに中華街があり,中国系住民の利用者が多く,そのために中国語の資料がたくさん揃えられていました。館内は多くの利用者であふれ,子どもたちへのサービススペースが真ん中にあって,多少さわがしいのですが活気のある雰囲気といってもよいでしょう。この館はスタッフが他の近隣図書館よりも若干多く8名ほどです。しかし,中国語資料などについてはすべてボランティアに依存しています。
 PFLでは,中央館に限らず分館における各種の業務について,ボランティアを募集し,トレーニングを提供し,さまざまなサービスにあたってもらっています。なかには図書館情報学を学ぶ学生のインターンシップもあれば,図書館業務補助や,障害者とかアウトリーチサービスなどの支援のほか,英語やITの習得支援などに携わるものがありました。
kyori_006.jpg ボランティア活動ではありますが,基本的に資金援助などを行う図書館友の会活動が米国では盛んです。ちょうどこの地域図書館の友の会の会長とメンバーに出くわし,案内してくれた中央館の管理職とともに,これまでこの分館の図書館友の会がどのような貢献をしたかの説明を受けました。彼らは地域の要求を図書館に伝えるとともに,図書館に寄り添って,図書館活動のための支援を提供する存在です(図5中央の二人)




2.米国の都市型図書館の特徴
 都市型図書館サービスといえば,流入する低所得層を支援するサービスが目立ちます。フィラデルフィアは,中心部の人口が増えた,人が戻ってきたという,全米でも稀有な都市ではありますが,やはりその点は同じです。
 米国での都市型図書館サービスの第一の特徴は,市民性(シティズンシップ:コミュニティの一員としてだれにも認められる権利を擁護し,コミュニティに帰属し,義務を果たしてもらう)の確保です。
 もう一つの特徴は,日本と比べてですが,その図書館サービスの構成です。それがひいては住民の信頼を得るのにつながっていると思われます。

2.1 図書館サービスにおける市民性の確保
 図書館サービスにおける市民性の確保は,コミュニティのだれもが分け隔てなく図書館を利用できるようにすることです。なんらかの理由により十分に情報が得られない人々(障害があって利用できない,PCを所有していないためディジタル化された情報を利用できない)は,支援を受けます。ブルックリン,フィラデルフィアの図書館では,障害者はむろんのこと,住民間の情報格差について,とくにディジタル・デバイドのための対策が講じられていました。図書館が「知る自由」の権利を確保しようとするならば,それは現在不可欠です。
 また,米国では一般に図書館が,職探しや住宅問題など,各種の行政サービスの拠点となっています。これらは,市民としての基本的な権利を保証するものですが同時に,生活基盤を整えてコミュニティに帰属し果たすべき義務を遂行してもらうための支援という性格もあります。市民性について権利と義務の両面を確保するのです。ブルックリン図書館のインフォメーションコモンズの構想の中に組み込まれていた講習会の計画は,このような性格をもちます。
 公共図書館において,なぜインフォメーションコモンズを設置しようとしたかは,利用スタイルの変化などの観点もありますが,こういった考え方に立って構成されたものだと理解できました。

2.2 サービス構成と住民の認識
 どこの公共図書館も資料を提供しているというサービス自体は同じですから,そのあり方は大方似ているようにみえます。しかし,ちょっと注意してみると,その違いが見えてきます。
kyori_007.jpgサービスの全体の見取図をみると,米国の公共図書館のある程度の規模のものには,現在の日本には見られないポピュラー・ライブラリー部門が存在し,それとともに主題別コレクションの部門 (例図6)が設置されています。主題部門がBPLのビジネス&キャリア・ライブラリーのように別に設置されている場合をもつこともあります。またPFLのように素晴らしい貴重書部門もあります。そして,レファレンスサービスは主にこのような主題部門ごとに行われているのです。
 これが,これまでの図書館の基本的な枠組みなのですが,1970年代以降発展したわが国の公共図書館は,この枠組みでいうと貸出サービスを中心のポピュラー・ライブラリーの部門だけになっているようです。いいかえれば一般に,主題別部門とそれに付随するレファレンスサービスが極めて貧弱だということです(上にのべたPFLのレファレンス件数を参照)。
 その結果,わが国では公共図書館とは一般的な本を借りに行く場所であり,通常の専門書すらあまり期待できず,またなにかを自ら調べたり,図書館員に調査を依頼したりできるものとは考えられてはいません。これが,図書館に対する住民の一般的な認識です。それは住民にとって頼りになる存在としてのサービス設定ができていないということです。この認識が変えられなければ,これまでの利用者だけに接近できても,より多くの住民から頼られる存在となること,つまり図書館と住民との距離が近しい関係が構築できないと思われます。

kyori_008.jpg(まとめ)
 この文は,米国の公共図書館の事例を示すとともに,それに基づいて図書館と住民との距離について考えたものです。
 一つは図書館側が住民をどのようにとらえているかという側面が問題であり,2.1で述べたように,米国の公共図書館では,住民全体を捉え,市民性の確保に貢献する活動を行っています。それは住民全体のいわば平均値をとるというものではなく,現在進展しているさまざまなディジタルサービスも視野に入れた,人々にとって必要なサービスを水準を確保するものです。
 一方,図書館がコレクションを形成し,情報・知識の蓄積を維持して,調査研究の用にも足りうるものとなっていますから,住民は図書館について単に貸出サービスだけを受けるというだけでなく,図書館は課題解決のよりどころにできるという認識をもつことができるといえます。
 今回の図書館調査は,われわれの公共図書館サービスが,住民をどのように迎え,また,住民からどのように受け止められているかを改めて見つめなおすよい機会でした。(永田治樹)

はじめに
公共図書館においてどのようなサービスが提供されるかは、図書館の利用者・関係者にとって基本的な関心事である 。(※1)例えば、米国公共図書館協会(ALA/PLA)は以前、次のような13の公共図書館サービス領域を示唆した 。(※2)


①基礎リテラシー、②仕事とキャリアの情報、③公共のたまり場、④コミュニティのレフェラル、⑤消費者情報、⑥文化の啓発、⑦最新の話題や評判の図書、⑧正規学習の支援、⑨総合案内、⑩行政情報、⑪情報リテラシー、⑫生涯学習、⑬地方史と家系調査


広いサービスの視野である。しかし、13領域すべてがどの図書館にも必須ではなく、それぞれの図書館がその地域の状況を踏まえて選択的に展開すればよいものだ。
わが国の場合、最近「課題解決型サービス」というアプローチでサービス視野を広げる動きがみられるが、これまではこのレベルの議論が少なかったし、資料提供だけにまず目がいってしまう傾向があった。近年の情報技術の進展や社会発展によりわれわれのまわりも大きく変化しており、公共図書館サービスの視野がどのようにあったらよいかを改めて検討すべきところにきているだろう。


ここ数年関わっている国際標準化機構(ISO)「情報とドキュメンテーション」専門委員会(TC46))「統計と評価」分科会(SC8)の会合で、欧米の同僚(とくに公共図書館関係者)の考えているサービス視野とわれわれのものとは、かなり距離があるということを強く認識させられた。そこで、欧米における現状を整理して、この問題を取りまとめておくことにした。

最初に、図1、米国のある公共図書館ウェブのトップページの構成に注目したい。
どこにでもある普通のウェブページであるが、ここに近年のサービス視野の変化を映すものが見られる。このページの右下、太線で囲った部分の六つのアイコン(フェースブック(Facebook)、ツィッター(Twitter)、フリッカー(Flickr)、ヴィメオ(vimeo)、ユウチューブ(YouTube)、マイスペース(Myspace))は、いわゆる社会的ソフトウェア(Social software)といわれるものである。社会的ソフトウェアとは、コンピュータによるコミュニケーションを通じて、人々が集い、つながり、共同することを可能にするソフトウェアで、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)や、静止画・動画などの交換サイトなどがこれに含まれる。それを図書館が積極的に活用しようとしているのである。そのわけを理解するために、近年、社会変化への欧米の公共図書館サービスの対応状況からみていこう。

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図1 米国デンバー公共図書館のウェブページ(※3)

1.情報技術の進展への対応
20世紀後半から始まった情報通信の技術革新によって、図書館では、業務の自動化、OPAC(オンライン利用者用目録)やデータベース検索サービス、そして電子図書サービスが出現した。この間、インターネットやウェブ技術などの進展に合わせて、とくに図書館サービスの利用性を高めるためにさまざまな努力が払われた。この動きにおいて決定的な影響を及ぼしたものをあげるとすれば、それは図書館資料のディジタル化だったろう。
先行した雑誌の領域では、1990年代からディジタル化が始まり、今では5万タイトルほどの電子雑誌が出版されている。学術領域では基本的なタイトルは大方それに含まれ、大学図書館などはすでに「ディジタル(資料をサービスする)図書館」となっているといってもいい。また、図書(単行本)の領域ではディジタル化はテキストや参考図書などに止まっていたものが、昨今電子図書リーダー(書籍端末)によって、米国を中心として一気に普及しつつある。現在でも出版されるもののほぼすべてはディジタル化されているのだから、問題は利用の領域にあったわけで、このような手立てと流通ルートが安定すれば、今後電子図書は急速に進展すると考えられる。
一方、図書館等にこれまでに収蔵された紙媒体資料のディジタル化の動きも進展している。ミシガン大学図書館のように近いうちにディジタル化が完了する図書館もある。このきっかけをつくったのが、2004年に始まったグーグルプリント・プロジェクトで、すでに千数百万タイトルのディジタル化を終えているし、そのほかに各機関・プロジェクトでディジタル化が推進されている。ディジタル化された資料については、各図書館で提供するフルテキスト・サービスのほか、グーグルによるもの(Google books及びGoogle ebookstore のパブリックドメイン[280万冊])があるし、ハティトラスト・ディジタル図書館(Hathi Trust Digital Library: 2008年に設置された学術・研究図書館の連携。現在、50以上の機関が加盟しており700万冊のディジタル資料を有する)といった共同利用の動きも始まっている。このことから、これまでの紙媒体で出版された、いわば遡及ディジタル化されねばならない部分についても、そのめどは立ちつつあるといえる。


(公共図書館のディジタル・サービス)
進展するディジタル化に対して、公共図書館でも電子図書館サービスが期待されている。欧米ではどのような状態になっているか、一例を引いておこう。
図2にみるように、米国サンフランシスコ公共図書館の電子図書館のページには八つの項目が立てられている。それぞれの項目をクリックしてみるとディジタル情報にアクセスできる。たとえば、雑誌記事とデータベースの項目だけでも、数十の雑誌、新聞、百科事典、参考資料、電子図書などのセットがあり、それぞれがまた数十、あるいは数百のコンテンツ(テキスト、録音、画像、動画等から構成される)からなっているのであり、われわれの想定をはるかに超える内容が提供されている。これが欧米の公共図書館における電子図書館サービスの状況である。

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図2 米国サンフランシスコ公共図書館の電子図書館サイト(※4)

これほどのサービスを欧米のどの公共図書館でも展開しているわけではないが、さほど珍しい例でもない。それに対して、われわれの公共図書館では、このようなものと比べると電子図書館サービスそのものがほぼ存在しないに等しい。まずは、ここまで彼我の差が大きいことを認識しておく必要がある。
もっとも国内のディジタル出版の状況が遅れていることもあって、コンテンツに関するこの格差はある程度は仕方がないともいえる。しかし、実はそれだけではないことも付け加えておかねばならない。
コンピュータの設置など利用環境といった面でも、わが国の公共図書館はひどく貧弱である。地域の公共図書館で利用者が自由に使えるコンピュータ座席は極めて少ない。あっても検索用コンピュータに限定されていたりする。人々が新聞や多くの市民生活に有用な情報をきがねなく閲覧できるコンピュータ(インターネット接続)を設置している図書館は、数えるほどしかない。この点では、欧米の公共図書館ではなくいわゆる先進国(IMFの定義)以外の国々ですら、わが国の公共図書館より先んじているといっていいだろう。図3と図4は、メデジン市(コロンビア)と杭州市拱墅区(中国)の図書館での写真である。中央図書館ではなく地域図書館のレベルでもパソコンは自由に使える設定にある。
電子図書館サービスの導入・拡大は、図書館にとって単なる情報提供以上の意味を持つものである。電子的な情報資源に関する、情報を探し、判断・評価し、活用できる能力(情報リテラシー)は、以前の印刷体のものと同一ではない。図書館は人々がそうした能力を身につけられるように支援をすべきで、さもないと人々は今後情報獲得の機会を逸してしまう。こうした見方を、欧米の公共図書館では早くから採り、この活動の根拠としている。しかし、わが国の公共図書館ではあたかも情報化の進展がなかったかのような状況だ。

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                   図3メデジン・パルケ図書館                       図4 杭州拱墅区図書館

 2.社会発展への対応(社会的排除の克服)
人々がいつでも、どこでも自由に学ぶことができる社会という生涯学習社会は、人々に主体的に学ぶ価値を訴えたものだ。しかし、結果として学べる人と学べない人といった差異も現出させることにもなる。実際、われわれの情報社会では、情報機器や情報をうまく使って生活を確立できる人(情報リッチ)とそうではない人(情報プア)との情報デバイド(情報格差)が生み出された。社会の急速な発展は、人々の生活のスタイルや価値観を多様にし、また機会を求める人々の見知らぬ地への移動を促している。今ではコミュニティは、多くの差異のある構成員を含み込んでいる。その結果人々の関係が希薄になったり、格差が生じたりして、コミュニティが機能しなくなるといった事態も生じている。
英国の公共図書館政策(社会へのキャッチアップを図るための設計書となった『新しい図書館:市民のネットワーク』(※5) とそれに次いで公表された『将来に向けての基本的考え方』(※6) )では、こうした問題への対応を明らかにしている。例えば、現代における公共図書館の使命として、「社会的排除(なんらかの理由で個人や集団が差別されたり、社会から排除されたりすること)を克服し地域のアイデンティティを構築し、社会参加を推進する」ことが盛り込まれた。貧困、文化的マイノリティ、居住地域などのせいで社会的排除を被っている人々を取り込み、その社会参加を促し、コミュニティの価値の回復を確保しようとするものだ。
このような方策の事例の一つが、アイデア・ストアの活動である。

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図5 アイデア・ストアのウェブページ(※7)

 図書館とは呼ばず、アイデア・ストアという名称のこの施設は、低所得の住民が多い、利用者登録率も極めて低かった、ロンドン東部タワーハムレッツ区に計画され、2002年にオープンした施設である。週7日合計71時間開いていて、"ホワイエでは勉強も読書もできるし、広いカフェで食事もできる。ホールのいたるところにインターネットにつながるコンピュータが置かれ、すぐに使える。図書館職員は成人教育と図書館の経験者で、一つのチームに統合され、同じTシャツをきている。最初のアイデア・ストアの試作モデルの一部は改装された図書館で、[建てられてから]100年を経ていたが、鮮やかな色彩とモダンな家具のおかげで、レコード店かインターネット・カフェのようになった。来館者は3倍になり、貸出は65%増えた"とその状況が報告されている。
公共図書館はだれもわけへだてなく受けいれる施設であり、もともと社会事業(social service)と親和的で、人々を地域や社会のなかに包摂するための活動拠点として位置づけられることは自然であろう。この施策では、アイデア・ストアのほか、特定地域に焦点を当てた子育て支援(シュアスタート)(※8) との連携などのさまざまな活動が行われている。また、わが国でも取り組まれている多文化サービスもこの一例である。このようなあり方が、近年英国に限らず欧米の公共図書館で広く受けいれられている。そのことを、ISOでの同僚の一人は「政府が最近この領域で図書館を発見したのだ」と表現していた。現代社会では、孤立しがちな人々をつなぎ、職を得るためのキャリアアップ支援など、人々の頼みの綱となる図書館という設定は不可欠なものであろう。

3.社会的ソフトウェアの活用
「社会的ソフトウェア」という言葉は、日本ではまだ定着していない。グーグルで調べてもこの言葉でヒットするのは2010年10月の時点でせいぜい1万数千件にすぎない。それに対して"social software"となると百万件を軽く超す。情報ネットワーク社会でもっとも活発な活動であるのにもかかわらず、この社会的ソフトウェアの可能性がわが国ではきちんと理解されていないのかもしれない。SNSが犯罪に使われるといった負の側面での報道はときおり目にするが、つながった人々の連携がさまざまな可能性を生むものだという論調は多くない。それに公立の機関が使うとなると、万一の事故が心配で、責任のあり方の議論が先行してなにも進まない現実があるのだろう(わが国の公立図書館に設置してあるコンピュータは必要以上にフィルターや制限がかけられている)。しかし、人々の交流やさまざまなデータの共有を可能にするなどコミュニケーション・ツールとして、社会的ソフトウェアはきわめて有効なものである。問題は、活用の仕方である。

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図6 デンバー公共図書館のフェースブック (※9)

 冒頭の図書館のウェブサイトにあったデンバー公共図書館フェースブックをみてみよう。たまたま遭遇したものだが(日々変わっていく)、図6では図書館がアイフォンやアンドロイドへの電子図書のダウンロードが可能になったことを発表し、それに地域の人々がコメントをつけたりしている。世界最大級となっているSNSを公表媒体として用いて、利用者とのコンタクトポイントとして活用し、また地域の人々同士の交流も促すという仕掛けである。図書館では、マイスペースも良く使われているし、もっと短い文章で話題を提供する場合は、ツイッターも各図書館で使われている。
次の図7は、フリッカーを活用したニューヨーク公共図書館の画像コレクションである。ヤフー(Yahoo)が展開するこの共有サイトを図書館コレクションのサイトとして使っている。人々は、写真などをここに付け加えることもできるし、気に入った画像にコメントを付けることも可能である。フリッカーを使って、地域の写真アーカイブをつくっている図書館や児童画展示を行う図書館もある。それぞれの公共図書館がこうしたサイトを維持するのは容易ではないが、社会的ソフトウェアであれば手軽に実現でき、かつ人々の交流という副次的な効果も見込める。
静止画像ではなくて、動画サイトとしてユウチューブも図書館によく使われている。図書館の利用案内や資料の使い方などの案内をこのサイトに挙げているところは多い。お披露目の例もある(最近評判のアムステルダム公共図書館(オランダ)の様子が見られる)。

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図7 ニューヨーク公共図書館のphotostream (※10)

さらに、ユウチューブといえば教育用の動画サイト、YouTube EDUがあり、図書館にとっては見逃せないコンテンツである。こうした観点からいえば、アイチューン・ユウiTunes U も挙げなければいけないかもしれない。そこでは、大学が作成する教育プログラムなどを提供している(昨今日本の大学もその講義などをこれに提供し始めている)。

おわりに
欧米の公共図書館サービスの状況を二つの観点からたどった。そのサービスは、環境変化に対応して更新されていることが確認できた。それとともに、図書館の社会的ソフトウェアの活用例に着目した。このソフトウェアは、情報技術を使ったコンテンツ提供の面と、図書館にとってコミュニティや人々との結びつきを促すためのツールという面とを持つものである。
社会的ソフトウェアの活用は、このようにみてくると、情報技術の進展に対応し、コミュニティの再構築という課題を負った欧米の公共図書館にとって、ごく自然なサービス展開の道筋だったのだと理解できる。
 ここ20年ほどの間に、図書館をとりまく環境は大きく変化し、それに対応する動きが求められるようになっている。しかしわが国の公共図書館サービスのパラダイムは、1970年代の貸出図書館モデルにとどまっているのではないかとついつい考えてしまう。欧米との隔たりは、実は想像以上に大きい。その一つは、電子図書館サービスへの取り組みの差である。またそれに加えて、現代において社会的に排除されている人々をコミュニティに組み込む努力にも差がある。前者は「人々により充実した図書館サービスを」という視野であり、後者は「すべての人々に図書館サービスを」というものである。この二つを欧米では両立させるようとしている。うまくやっていくには多々困難も予想される。しかし目指すべき行方ではないかと考えられる。(2010-10-21 永田 治樹)

 

 ※1 利用者、図書館管理者、友の会会員など7つのグループのどれもが、61項目のうちで図書館が効果を発揮する要素として上位5位以内に「サービス範囲の設定」を挙げている。Van House & Childers. The Public Library Effectiveness Study. ALA, 1993, p.32.
 ※2 Himmel, Ethel & Wilson, William James. Planning for Results: A Public Library Transformation Process. ALA, 1998. p.21.
※3  http://denverlibrary.org/ 図1-2、5-7は、ウェブページの一部である。ハイパーリンクとともにURLを示す。ただし、コンテンツは各図書館で逐次変更される可能性がある。
※4  http://sfpl.org/index.php?pg=0000000301
※5  翻訳:英国図書館情報委員会情報技術ワーキンググループ『新しい図書館:市民のネットワーク』日本図書館協会,2001, 31p. 原題:New Library: The People's Network.
※6 翻訳:英国文化・メディア・スポーツ省『情来へ向けての基本的な考え方;今後10年の図書館・学習・情報』日本図書館協会,2005, 63p. 原題:Framework for the Future: Libraries, Learning and Information in the Next decade.
※7 http://www.enabledlondon.com/default/5.venues/library/IdeaBow.htm
※8 「イングランドの就学前児童の子育て環境整備」(http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/cr340m.html)を参照。
※9 http://www.facebook.com/denverpubliclibrary
※10 http://www.flickr.com/photos/nypl/


最初は、フィレンツェの会議場付近を散策していた際にみつけた市立中央図書館で、ドゥオモ広場にほど近いオリウオロ通りの横断幕を目にしたのがきっかけだった。サインに従って、建物にはいってみた。まずはカウンターがあり(写真1)、左手の扉の向こうには静整然と机が並んだ閲覧室があった。真夏だったがいっぱいの利用者がそれぞれ図書などを読みふけっていた。
しかし階上は、まったく異なったしつらえだ(写真2)。パーソナルコンピュータ(PC)などが配置された一角もさることながら、利用者が居心地よく読書や調べものができるよう設計してあり、書架の並びにしても機械的な配列のわれわれのものとは違って、余白を感じさせる設計だった。

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写真1                            写真2

3日間の会議終了後、サラボルサ図書館の評判を聞いて、ボローニャに足を伸ばしてみた。フィレンツェから速い列車ならば40分程度で着く。中世の佇まいを残しつつも、エミリア・ロマーニャの中心として近代化の進展が早かった街だ。美食でも有名だが、西欧最古の大学のある文化都市でもあり、出版活動が盛んで、毎年児童書ブックフェア(その際に国際絵本原画展も)が開催される。ちなみに、ボローニャと姉妹都市の東京都板橋区には、いたばしボローニャ子ども絵本館がある(2004年開館)。

ボローニャ市(人口約38万人)の図書館には、「専門調査図書館」(Biblioteca special e di ricerca)と「一般情報図書館」(Biblioteca di informatione generale)とがあり、サラボルサ図書館やその子ども図書館と11の地域図書館は後者である(図1)。
サラボルサ図書館は、街の中心部のマッジョーレ広場(正確には隣のPiazza del Nettuno)に面した、13世紀に遡るという3階建て建物の一角にある。所蔵資料は、図書が約25万冊(そのうち、5万冊は子どもやヤングアダルト用)、ビデオ・DVDが1万数千点だ。

window_img03.jpg                       図1

 うっかりすると見落としそうな入口(写真3)から通路づたいに進むと、吹き抜けになったホールに至る。そこは予想外の広々とした空間で、それを取り囲みようにそれぞれの利用のエリアが(写真4、5)配置されている(写真6、7)(YouTubeでもみられる)。実際にあちこちで腰をおろし使ってみる。心楽しくなる図書館だ。人々もこの図書館を好んで使っているようで、Anna Galluziiも"成功物語"として紹介しているように(New public libraries in Italy: Trends and issues. The International Information & Library Review. 2009, 41, p. 52-59)この図書館の評判はすこぶるよい。
                                            window_img04.jpg 写真3

 

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 写真4                          写真5

「専門調査図書館」としては、1801年につくられたアルキジンナジオ図書館がマッジョーレ広場を向こう側にある(図1のA、写真8は入口)。建物は1563年に建設され、ボローニャ大学本館が使っていたもので、大変美しい(これを紹介したブログ「旧ボローニャ大学 アルキジンナジオ Archiginnasio」を参照)。また所蔵する資料は、インキュナブラをはじめとする80万を超す貴重な図書や文書を擁することで知られている。こちらはもちろん書庫出納による資料閲覧だし、入館からして規制がかかっている。しかし、WiFiもあり、持ちこんだPCも使える。落ち着いた空間やその座席は長時間にわたって調査研究するのに申し分ない。

 

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 写真6                          写真7

 欧米でも大陸欧州の南のほうはこれまで、図書館先進地域だと考えられている英米や北欧と比べて、図書館のスタイル(建物や施設を含むサービスの対応の在り方)は違ったものだった。公共図書館でも資料が書庫におかれ、それを閲覧する静かな閲覧室で利用するという窮屈なスタイルだった。「一般情報図書館」がさほど進展せず、「専門調査図書館」のスタイルが標準的で、その制度を「一般情報図書館」にも適用していたことによるのだろう。しかし現在は、以前のものとは大きく変わり、サラボルサ図書館のように快適な使い勝手とよい雰囲気の空間が提供されている。また、「専門調査図書館」も新たな工夫がこらされている。

                                          window_img09.jpg写真8

ところで、私が子どものころの公共図書館といえば、シーリアスな資料ばかりで、それも多くは書庫にあって、いちいち出納してもらい利用するスタイルだった。利用者はほんとうに少なかった。日本では1960年代後半以降図書館が急速に増え、そのスタイルも変化し、今のような気軽に利用できるものとなった。この変化の契機をつくったのは、定説によれば「中小レポート」(『中小都市においける公共図書館の運営』)1963年)となるが、確かにその後の進展は目を見張るものだった。
しかし、わが国の公共図書館における現在の平均的なスタイルが、そのカウンターパートとなるサラボルサ図書館に見る新しいスタイルと同じかといえば決してそうではない。建物の素晴らしさをここでは問題にしないとして、次のような違いをあげられると思う。

挿入した写真でお気づきかと思うが、第一は情報技術の進展をきちんと取り込んだサービスの展開である。確かにわが国の公共図書館でもたいていPCが備えつけてある。しかし、台数は少なく、時間制限があり、ちょっと調べごとする場合でも申請をさせたり、メールを禁止したり、プリントやダウンロードが例外的にしか許可されないなどの多くの規制がある。これでなにをしようするのだろうか。人々は生活情報やときには重要な文書を、情報ネットワークを通じて入手し、活用をする必要がある。また、情報ネットワークは、人々のコミュニケーション手段としても大変有用なものだ。そうした理解や支援の熱意が図書館に欠けているようである。今にいたるまでわが国の公共図書館はこの種のサービスをきちんと取り扱うことができていない。

二つ目は、図書館は人々の読書や学習や調べものをする場であるという点である。以前の図書館にあった館内の座席が、貸出を図書館サービスの中心に据え、学生の座席貸しを排除するという姿勢で、極端に減少してしまった。人々は、学習や読書の時間や空間を図書館にも求めているのである。実際、多くの公共図書館で座席が不足しているし、要望も高い。大学図書館が現在、インフォメーション・コモンズによって息を吹き返し、利用者を増やし、常に盛況なのをみるといい。図書館は人々の知識のための共有地なのであり、快適な空間は不可欠だ。イタリアの公共図書館がこの伝統を失わなかったことはうらやましいことだ。

このことは、三つ目の点につながる。サラボルサ図書館の計画は、今や世界中の多くのところで行われているように、都市再開発計画のプロジェクトの一環であった。この種のプロジェクトでは、公共図書館はコミュニティを活性化する中核となりうる。ボローニャ市は、市庁やサンペトロニオ教会などのある歴史的なマッジョーレ広場一帯を、この図書館と四つの博物館や一つの美術館、それにパフォーマンスや文化活動のコートヤードによって市民の文化的・社交的な場に変えようとしたのである。そして見事にここを市民の集い、行き交うコミュニティの場とすることができた。図書館のコミュニティを支える機能をもっと見つめ直してみたい。

イタリアの公共図書館を瞥見して、そのスタイルのあり方についてあれこれ考えさえられた。古いもののある部分が残り、ある部分が変更されるのは必然だろう。しかしどのように変更すべきか決まりきっているわけではない。人々の生活を支援する図書館にとっては、それは人々の生活の変化をきちんととらえ、サービスに反映するかに関わっているところだろう。(永田治樹) 


当社(コンソーシアムとして)が管理・運営を任されている新宿区立四谷図書館・新宿区立大久保図書館では、「多文化共生サービス」を開始しました。「多文化共生サービス」は、第一義には近隣に居住・滞在する、異なる民族、言語、文化的な背景をもつ少数の方々へのサービスです。また、その他大多数を占める住民に対しては異なる民族、言語、文化の理解を促すという役割も担っております。
この図書館では、地域に居住者数の多い、中国、韓国・朝鮮の方が主たる対象となります。日本語を含め、それぞれの言語による資料や人的支援サービスを提供するとともに、日本社会に馴染んでもらえるような交流会や、近隣の交流の場を提供したいと考えております。まだ緒についたばかりで、当面次のようなサービスを展開していきます。今後更に充実を図っていきたいと存じますので、みなさんのご意見をお待ちしています。

資料の収集・提供
購入や受贈によって、対象となる居住者の母語資料や関連する日本語資料を収集・提供。

母語によるサービスの提供
ネイティブスタッフを適宜配属し、母語によるサービスの提供を実施。

関連施設との協力・連携
海外や国内の各施設で編集や発行している案内等を取り寄せ、多文化図書コーナーの設置。

案内物や掲出物
館内掲示、印刷物等に複数言語を使用し、専用コーナーを設置。